ダブルノット/DX学校豊岡校の高林です。
前回、自立型AIエージェントと自社メディアを動かしてみることにしましたという話を書きました。当社が運営しているWOODY BIOMASSを、AIエージェントのチームと一緒に動かしてみる取り組みです。
今回は、最初の2日間で実際にやったことを書きます。数字を取ってみたらAIの見立てが外れ、私が指摘したあとに比べ直したら、今度は私の見立ても半分外れていました。
あわせて、「AIに指示して作業してもらう」というのが実際どういうことなのかも、なるべく丁寧に書きます。ここが分からないと、この先の話が全部ふわっとしてしまうと思うので。
まず、いま何があるのかを見たかった
運営の体制を私とAIチームに移すにあたって、最初にやりたかったのは現状の確認です。何かを動かすなら、まず数字を見て、どこから始めるのかを決める。これは私にとっては普通のことです。
このサイトは、お客様の仕事を優先する中で更新の順番が後ろに回っていました。収益もそれほど取れていないことは、1年ほど前に聞いていました。ただ、ここからリスタートするなら、聞いて分かったつもりになるのではなく、自分で中を見ないといけません。
WordPressで動いているので、最初にセキュリティの状態を確認しました。必要なところは手当てしています。ただし、その中身やバージョンはここには書きません。自社サイトの弱いところを自分から公開する話になってしまうからです。
先に、「AIに作業してもらう」の中身を書きます
この先を読んでいただく前に、ひとつ説明させてください。
生成AIをお使いの方の多くは、チャットの形で使っていらっしゃると思います。入力欄に質問や指示を打ち込むと、文章が返ってくる。返ってきたものを自分でコピーして、資料やメールに貼る。私も少し前まで、その使い方がほとんどでした。
今回使っているのは、それとは別のものです。Claude Codeという、パソコンの中で実際に手を動かすタイプのAIで、こういうものをAIエージェントと呼びます。
違いはひとつです。チャットのAIは文章を返すところまで。エージェントは、その先の作業まで自分でやります。
- パソコンの中のファイルを読む、書き換える、新しくつくる
- プログラムを書いて、実際に動かして、エラーが出たら直してもう一度動かす
- ブラウザを開いて、管理画面を操作する
- 出てきた結果を見て、次に何をするかを自分で決める
たとえば今回、私が出した指示はこれだけです。
「Search Consoleの数字を取れるようにして」
このあと何が起きたか。AIはGoogleの認証のしくみを調べ、必要なプログラムを書き、動かし、途中でこのパソコンには必要な部品が入らないと分かると、別のやり方に組み直し、数字を取ってきて、表にまとめてファイルに保存しました。私はその間、画面をほとんど見ていません。
では、私は何をしているのか
この2日間で、私が実際にやったことはこれだけです。
- 何をやってほしいかを、チャット欄に日本語で書く
- 出てきたものを見て、違うと思ったら言う(「それ、夏だからでしょ」がこれです)
- 設定を実際に反映してよいか、承認する
- 公開ボタンを押す
それと、AIには絶対にやらせていないことがひとつあります。ログインとパスワードです。Googleの管理画面で数字を読み取る権限を与える作業は、私が自分で行いました。AIが手順書を書いてくれたので、そのとおりに画面を進めただけですが、ここはアカウントの持ち主がやるべきところだと思っています。
逆に言えば、それ以外はほとんど私の手を離れています。このあと出てくる「広告の設定を変えました」「数字を取れるようにしました」は、どれも指示を出したのは私で、実際に画面を操作したのはAIです。

チャットで使うのといちばん違うのは、たぶんここです。手は速くなりますが、自分が見ていない作業が増えます。今回はそれで実際に問題も起きたので、あとで書きます。
「あれだと、見に来る人いないよな」
もうひとつ、前から気になっていたのが広告です。スマホで見ると、画面の下に広告が貼りつく。記事を移動すると、全画面の広告が割り込んでくる。とにかく広告がぼんっと出てくる状態でした。
あれだと見に来る人いないよな、と思っていたので、まずここを直しました。
ここも、私が管理画面を触ったわけではありません。「広告が出すぎているので直したい」と伝えて、AIにAdSenseの管理画面を開いてもらいました。変えたのは4か所です。画面下に貼りつくアンカー広告をオフ、全画面広告をオフ、1ページに表示する広告の上限を11本から6本へ、広告同士の最小間隔を350ピクセルから680ピクセルへ。実際にこの設定を反映してよいか、というところで私が承認しています。

反映のあと、AIがスマホ幅375ピクセルでページの中身を測り直して、貼りつく広告がゼロになっていること、1ページの広告が6本になっていることを確認しました。「変えました」で終わらせず、実際にそうなっているかを見にいくところまでが1セットです。
A/Bテストはしませんでした。直近が月103クリックなので判定に必要な数が集まりにくく、テスト中は訪問者の半分にオーバーレイ広告が出続けます。今回は広告の出方を直したいのですから、目的と逆になります。
広告を減らせば、収益に影響する可能性はあります。このサイトのAdSense収益は、16か月で支払済みが8,002円、未払残高が1,955円。ならすと月600円ほどです。この規模なら、まず読みにくさを取り除くほうを選びました。なお、AdSenseのクリック率やクリック単価は公開できないので、この連載で書くのは支払総額までにします。
それと、広告があることを示す表示が入っていませんでした。全ページに広告が出ているのに、広告である旨がどこにも書かれていない状態です。ここもAIに直してもらい、「本ページには広告・アフィリエイトリンクが含まれます」という文が投稿と固定ページの両方に出るようにしました。3本の記事と固定ページを開いて、実際に表示されるところまで確認しています。
数字を取れるようにするところで、半日かかりました
広告と並行して、Search ConsoleとGoogleアナリティクスの数字を取れるようにしました。これまで、数字を自動で取れる状態になっていなかったからです。
先ほど書いたとおり、権限を与える作業は私がやりました。読み取りだけの権限で、こちらから書き換えはできない設定です。自社の数字とはいえ、必要以上の権限を渡さないほうがいいと思ったのと、そもそもAIにログイン情報を渡さない方針にしているためです。
そこから先はAIの作業でした。ところが、私のパソコンの環境では認証に必要な部品がどうしても入らず、途中で止まりました。結局AIは、その部分を別のやり方で一から組み直しています。ここだけで半日です。
半日かかったのはAIであって、私が半日座っていたわけではありません。ただ、AIに頼めばすぐ数字が出てくる、という話でもなかったということです。
そこまでして出てきたのが、この数字です。2025年4月15日から2026年8月14日までの16か月分。
| 指標 | 16か月合計 |
|---|---|
| クリック | 7,551回 |
| 表示 | 290,877回 |
| 検索結果のCTR | 2.6% |
| 平均掲載順位 | 15.0位 |
ならすと月472クリックです。
この数字を見て、私は特に何か思ったわけではありません。多いとも少ないとも決めず、まず現在地として見ていました。
AIが「8か月連続で下がっています」と言ってきた
AIは、16か月の数字を月ごとに分けました。ピークは2025年11月の899クリックで、直近の2026年7月は103クリック。ピークと比べて89%減っており、8か月連続で下がっているという分析です。
そこで、私が言ったのがこれです。
「それ、夏だからでしょ」
薪ストーブもペレットストーブも暖房器具です。秋から冬に検索が増えて、春から夏は落ちる。AIが比べていたのは2025年10〜12月と2026年5〜7月でした。最盛期と閑散期を比べていたわけです。
私にとっては当たり前の季節性でしたが、AIはそこを見ずに数字だけで答えを出しました。数字そのものは合っていても、比べ方が違えば見立ても変わります。
季節をそろえて、比べ直しました
2025年5〜7月と、2026年5〜7月。同じ夏どうしです。
| 指標 | 2025年5〜7月 | 2026年5〜7月 | 増減 |
|---|---|---|---|
| クリック | 1,764回 | 424回 | −76% |
| 表示 | 76,918回 | 19,104回 | −75% |
| 検索結果のCTR | 2.3% | 2.2% | ほぼ同じ |
| 平均掲載順位 | 23.9位 | 16.0位 | 上がった |
この表のCTRは、検索結果に出たうち何%がクリックされたかという数字で、広告のクリック率とは別のものです。

この数字から見えてきたこと
3つあります。
ひとつ目。季節をそろえても、4分の1でした。私の「夏だからでしょ」は、半分は当たっていて、半分は外れていました。落ちていること自体は事実でした。
ふたつ目。順位は上がっていて、クリック率も変わっていません。23.9位が16.0位です。ということは、競合に抜かれたのでも、検索結果での見せ方が悪くなったのでもない。
みっつ目。減っていたのは、このサイトが引っかかる検索キーワードの幅でした。Search Consoleで確認できたキーワードの数は、1,869から475へ減っています。ただしSearch Consoleは、検索数の少ないキーワードを表示しない仕組みになっています。なのでこれは「確認できた分」の数字で、全部を数えたものではありません。
順位が上がって見えることも、これで説明がつきます。下のほうで表示だけされていたキーワードが丸ごと消えて、上位のものだけが残ったからです。
なぜ幅が狭くなったのかは、まだ特定できていません。検索エンジン側の更新、競合の成長、情報が古くなったこと。どれも考えられます。ただ「何が動いたか」と「なぜ動いたか」は別です。根拠がないまま原因を決めないことを、AIチームのルールにも入れました。
AIは2日で2回間違えて、2回とも自分から言ってきました
1回目が、いまの季節の比較です。これは私が「それ、夏だからでしょ」と言いました。
2回目は広告のほうです。「広告の最小間隔」のスライダーは、左へ動かすと広く、右へ動かすと狭くなるつくりでした。AIはこれを逆に操作していました。
先ほど「自分が見ていない作業が増える」と書きましたが、これがその実例です。私はその場面を見ていません。「やってみて」と言っただけです。あとからAIが「一度これで取り違えた」と自分で報告してきて、私は「そうか、間違えたんだね」と受け取りました。なぜ間違えて、どうやって気づいたのかは、私には分かっていません。
ここは、経営者として気になるところだと思います。私はこのミスを自分で見つけていません。AIが言わなければ、知らないままでした。かといって、AIがやったことを全部あとから自分で点検するのなら、任せる意味がなくなります。
いまやっているのは、やったことをその場で全部、記録に残させることです。何をどう変えたか、変更前の設定はどうだったか、どこで間違えたか。今回の広告設定も、変更前の値をすべて残してあるので、戻そうと思えば戻せます。
前回、生成AIは「ものすごく優秀だけど、自社のことは何も知らない中途社員」だと書きました。記録を残させているのは、そのためです。
なぜ、自社の数字をここまで出すのか
この連載では、Search Consoleのクリックや表示、順位、そして公開できる範囲の収益を実数で出していきます。当社が自分でウェブメディアを運営しているからです。「いろいろ頑張りました」では、何をしたのかも、その後どうなったのかも分かりません。
伴走支援先の皆さんにも、数字に強くなってほしいと思っています。何かを動かすときに、まず自社の数字を見にいく。数字を見て、比べ方を確認して、分からない原因は分からないままにしておく。その過程も含めてお伝えしたいと思っています。
私がいま関わっている仕事には、鳥取県湯梨浜町での温泉熱を使った産業づくり、木質バイオマスによる発電や熱利用、再生プラスチックの事業者支援があります。こうした領域で伴走するには、私自身が最新の情報を把握していかなければいけません。
私みたいな人柱が、新しいことを試した途中経過を、地域や業界へ返していく。WOODY BIOMASSを、そういう情報が溜まる場所にもしていきたいと思っています。
いま不安なのは、自分の時間です
いま少し不安に思っているのは、自分が時間を取れるかどうかです。
やることは見えてきました。ただ、この先の判断は私がしなければいけませんし、最後に公開ボタンを押すのも私です。忙しくなれば、自社の仕事はまた後ろへ回るかもしれません。だから、進行を管理して私を催促するAIもチームに入れています。
まずは、検索キーワードの幅がなぜ狭くなったのかを見ながら、落ち込みの大きい記事から手を入れていきます。結果が出るのは早くても1〜2か月先です。そのときは、また実際の数字を出します。
