〜「やるべきだが進まない」をどう乗り超えたのか。介護業界のDXを「事業として成立させる」判断軸を整理したプロセス〜
ダブルノットが伴走支援を行った、鹿児島で介護福祉用具のレンタル・販売を手がけるリバティ社 代表取締役の上田さんにインタビューを実施しました。上田さんはリバティ社に加え、システム開発会社スマート社や鹿児島県内でカーブスを4施設運営するジェイズパートナー社の代表も務め、複数の領域で事業を展開する経営者です。現在はご実家でお母さまの介護も担い、介護業界の「現場のリアル」を知る当事者でもあります。
リバティ社が新規事業として進めている「介護事業者向け 生産性向上・DX推進の支援」。介護業界では、生産性向上やDXが制度面でも求められる一方で、現場の多忙さや属人性の強さから、改善活動が回らず止まってしまうケースも少なくありません。リバティ社は、導入した機器や仕組みを現場で使いこなす運用設計や、委員会運営・プロジェクト推進を支えるサービスとして成立させる構想を進めています。
そして、構想で終わらせず、「誰に・何を・どこまで提供するのか」を整理し、提案〜提供まで回る形に落とし込むために、上田さんはダブルノットの伴走支援を利用されました。支援の中では、生成AIを活用した事業整理・計画づくりの枠組みも取り入れながら、意思決定と設計を前に進めています。今回は、その背景にある課題、伴走支援を通じた変化、そして今後の展望について、上田さんにお伺いしました。
「物販一本足では、利益が積み上がらない」という危機感
ダブルノット社との出会いは、東京で開催されたDX学校の夏期講習会でした。二次会で代表の高林さんと意気投合し、元気で面白い人だなと興味を持ったのが始まりです。その後、当社の拠点である鹿児島で早速セミナーを開催してもらいました。
当社の主力は、介護福祉用具のレンタル・販売です。地域の介護現場を支える重要な仕事である一方、大手参入やそれによる価格競争により、以前のようにレンタル・販売を積み上げれば伸びるという事業環境ではなくなってきたと感じています。
当初はECサイトやSNS運用など販促強化で打開できないか、という発想もあり、実際そこからダブルノット社に支援を依頼しました。しかし議論を重ねる中で、介護領域では「SNSを見て買う」購買行動が一般化しておらず、物販ではAmazonや楽天など大手の土俵で勝つのも難しい、という現実が見えてきました。
そこで「これからは“モノ”だけでなく、“サービス(コンサル)で稼ぐ事業”を作らないといけない」という意思決定をしました。そこからダブルノット社にも販売強化ではなく次の事業の模索という支援内容に切り替えてもらいました。
介護業界のDXは「求められているのに、現場で止まってしまう」
介護業界のDXが進みにくい理由は、非常にシンプルです。紙文化・電話文化が根強い、やり方が人によって違う属人性が強い。加えて、現場がとにかく忙しい。
国の方針として、生産性向上の取り組みは強く求められています。ICT導入・見守りセンサー・インカム導入など、やるべきことは明確です。その一環として「生産性向上委員会」の立ち上げも進んでいます。しかし現場では、「委員会は立ち上げたが1回で終わる」「既存業務が忙しくて『誰がやるの?』で止まる」が起きがちです。
つまり問題は導入自体ではなく、導入後に回す仕組みがないこと。これは多くの介護事業者に共通する課題だと感じています。
一方で、ニーズがあると分かっていても、事業として成立させるには設計が必要です。誰に、何を、どこまで提供するのか。価格はどうするのか。提案の流れはどう作るのか。既存業務とどう両立させるのか。この設計が曖昧なままだと、「やったほうがいいよね」で止まってしまう。また、社内メンバーだけで進めようとすると、どうしても日々の既存業務が優先され、新しい取り組みは後回しになってしまいます。社内の人間関係や力関係もあり、会議で率直な意見が出にくいという側面もありました。
加えて、営業面の課題もありました。いざ新たなサービスを提案しようとしても、既存のスタッフには「御用聞き営業」が染み付いています。「何か注文はないですか?」と聞くことはできても、相手の課題に入り込んで解決策を提示する「提案型営業」のノウハウがありませんでした。
ここで必要だと感じたのが、外部の視点と強制力です。止まりやすいプロジェクトを、ペースメーカーのようにリードし、コミットを切って前に進める存在が不可欠でした。
曖昧だった構想が「商品」へ。ノウハウ移植と強制力が生んだ事業化の手応え
以前から大枠の方向性は見えていましたが、「誰に、何を、どこまで」の具体的な設計図が描けていませんでした。打ち手の候補が増えるほど意思決定が難しくなり、今何をやるべきかがぼやけてしまう感覚もありました。
高林さんと議論を重ねる中で、構想を「商品(パッケージ)」として形にすることができました。具体的には、支援範囲の線引き(現場理解と導入・運用定着に強みを絞る)、今期の現実的な目標(粗利数字など)、DX学校加盟店にも展開できるモデルづくり。具体的なことが見えてくると、目標に向かっていくスケジュールが引ける状態になりました。
また、新サービスを売っていくには、相手の課題に入り込む「提案型営業」が必要です。 会議の中で、高林さんの過去の経験や、クロージング、マーケティングのノウハウが共有されることで、同席している営業課長などの意識が明らかに変わってきました。「どう提案すれば刺さるか」という生きたノウハウが社内に移植されていることは、予期せぬ大きな収穫です。
私が考えているAI活用は、派手なものではありません。象徴的なのが、電話業務です。介護業界はとにかく電話が多く、メモを取って事務所で入力し直す二重作業が生産性を下げています。
現在、高林さんと相談しながら進めているのが、AIで通話内容をテキスト化し、そのままToDoやスケジュールに自動で落とし込む開発です。これが実現すれば、実質的なコールセンターの代替になり得ます。 便利なツール止まりではなく、事業のボトルネック(電話)を解消するシステムとしてAIを実装する計画が動き出しています。
そして何より、新しい取り組みが止まる最大要因は「忙しさ」。だからこそ「次はここまで」とコミットを切り、進捗を生む存在が重要になります。新サービスでの価値は知識の提供ではなく、第三者視点で全体を見てプロジェクトを前に進めること━━その役割の重要性を改めて実感しました。
今後に向けた焦点は2つです。1つ目は、新サービスを商品として成立させること。単発ではなく、再現性のあるモデルにする必要があります。セミナー内容、提案ストーリー、提供範囲、運用の型を整え、パッケージとして完成させる予定です。将来的にはこのモデルを自社だけで終わらせず、DX学校の加盟店などへ横展開し、介護福祉事業者向け支援という領域そのものを育てていきたいと考えています。
2つ目は、既存事業と両立できる体制を作ること。新規事業は、既存業務を抱えたままだと、忙しさに負けて止まりやすくなります。どこを分解し、誰を入れ、どうシフトしていくか。ここが一番難しい部分です。 今期は、社会福祉法人や医療法人で2〜3社のトライアル実績を作りながら、現実的に回るシフトを計画の中に落とし込んでいく段階です。
この取り組みは、リバティ社単体の成功で終わらせるものではありません。モデルを磨き、横展開可能な形にすることで、介護業界の生産性向上とDX推進支援という新しい選択肢を広げていきたいと考えています。

ダブルノットの“伴走支援”について
伴走支援の目的は、仕組みを整えることではなく、その仕組みが“自走する状態”をつくることです。
課題を整理し、方向性を示すところから支援は始まります。
最も大切なのは、現場が自ら動き出すこと。私たちは「答え」を与えるのではなく、動くためのきっかけをつくります。
ときには立ち止まりそうなチームの背中を押し、「やるぞ」と一歩を踏み出す瞬間を生み出します。
答えは会議室ではなく、顧客の中にあります。動くことでしか結果は変わらない。
だからこそ、挑戦した人を称え、失敗を恐れず試し続ける文化を育てることを大切にしています。
研修・伴走支援に関するご相談やお見積もりのご依頼は、下記よりお気軽にご連絡ください。
