2024年、中小企業のネットショップ運営の成功の鍵は何?5つの視点で見る未来予想

2024年。中小企業のネットショップ運営の成功の鍵は何?5つの視点で見る未来予想

2024年は、中小企業にとってネットショップ運営の重要な転換点となります。アフターコロナの新しい時代の幕開けで、中小企業がネットショップをスタートする際、変わらない事柄もあれば、新たに考え直すべきポイントもあります。このブログでは、政府の新しい方針から生成系AIの影響、2024年の物流問題、人口減少社会における労働環境の変化など、今年起こる様々な外部要因を踏まえ、 私、ネット店長育成塾 塾長 高林努 がネットショップを成功に導くために感がて行くべき5つ視点で、出来るだけ専門用語を使わず、わかりやすく掘り下げていきます。2024年にネットショップでいかに花開くことができるか、そのヒントを一緒に探っていきましょう。

はじめに:ネットでモノを買うが普通の時代へ

令和5年8月 経済産業省令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書より抜粋
令和5年8月 経済産業省令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書より抜粋

経産省の報告によると消費者がモノを買う時にネットショップ経由で購入した割合が9.13%となり、10%超が目前です。EC化率から利用人数を出すことはできないですが、この数字を見ると感覚値として多くの人がネットショップで購入する事へ抵抗感がない世の中になってきたと感じます。抵抗感がない世の中になったという事は「ネットショップをやってみたい」と思う企業も増えてきたと考えています。

令和5年6月 中小企業庁 2023年度版中小企業白書より抜粋
令和5年6月 中小企業庁 2023年度版中小企業白書より抜粋

じゃあ、誰がやるか?となると中小企業白書をみてもよくわかりますが「経営者がやるか」「やらない」が殆どです。さらに、ネットショップを行うためにはいくつかの壁があります。パソコンの導入、WiFiの整備、会計ソフトの導入などいわゆる会社組織のデジタル化です。そしてネットショップ構築をWeb制作会社に依頼して「よしスタートするぞ!」と思ったら意外と売れない。そうです商売はそんなに甘くないのです。そしてそのまま放置されていく。。。そんな話をたくさん聞きました。たくさんのお店がインターネット上に放置されています。言い換えると

\砂漠の中に最新設備完備のお店が無数放置状態/

です。とはいえ最新設備を「上手に使う人」がいれば勝機はあります。その勝機をつかむために2024年何ができるか?私と一緒に5つの視点で考えていきましょう!


【第1の視点:お店の作り方】ネットショップ界の「大規模小売店舗立地法」の施工元年か?!?新規出店者はお店建設ではなくテナント契約をしようという時代へ

2024年、IT導入補助金はECサイト開発やWeb制作から完全に除外されました。事業再構築補助金も見直され、「中小企業省力化投資補助事業」という新たな事業として登場します。この事業の主目的は人材不足の解消です。つまり、これ以上新しいシステムを構築しないでほしい。同じような有益なシステムが既に安価にたくさん存在するから、それらシステムを有効利用し、活用できる人材を育成してほしい!という方針の転換に思えます。

日常生活に例えると、新規出店者は、最新鋭の機材とシステム導入済みのテナントを安価に提供するから、この地域に店舗建設をしないように!と促されていると言えます。これはIT業界でいう「SaaS(サービスとしてのソフトウェア)の活用」にシフトしたということです。クラウド上には多様な有益なITサービスが存在し、それらは有機的に連携して店舗運営をサポートします。つまり、中小企業は、これらのITサービスを上手に活用する能力を身につけることが求められていると言えます。

最新機器には取扱説明書がなくても、基本的な操作は直感的に行えるよう設計されています。従って、ネットショップ開始時も同様に、取扱説明書がなくても基本的な操作は行えます。とはいえ、スタート時は砂漠の真ん中にお店があると想像してください。ネット店長はそこから顧客が訪れる道を自ら作り出し営業活動を行っていく必要があります。その道路は自分でDIYすることも、専門家に高速道路や新幹線のような高規格道路を依頼することもできます。ただし初期段階から専門家に重厚な道路建設を依頼する必要ないでしょう。


【第2の視点:店長はだれ?】様々なAI部下の登場によるネットショップ運営の産業革命化が加速する。

最新鋭のテナントで店舗運営すると「コンシェルジュサービス」も充実しています。具体的には、様々なAIが店舗運営をサポートしてくれます。これらのAIはまさに従業員同様で「AI部下」と呼べる存在です。

ただし、この優秀な「AI部下」を活用するには少しだけコツが必要です。本人の特性である「超指示待ち人間」であることを知っておくことです。AI部下は依頼された仕事を迅速かつ高品質でこなしますが、彼らは自発的に行動することはありません。依頼すれば最高級のサービスを提供してくれますが、先回りして提案することを期待してはいけません。超指示待ち人間であることを忘れずチームを組成していきましょう。このあたりの詳細は、デジタルハリウッドSTUDIO米子で講義したブログ記事が参考になるので気になる方はこちらをご覧ください。

ネットショップ運営は、最新鋭のITサービスが敷設されたテナントの一室で行われ、最高品質のコンシェルジュたちに支えられるようになります。つまり、人が行っていた仕事をAIに依頼し、AIに仕事を任せて空いた時間を「人間だけができる仕事」に集中することが求められます。とはいえネットショップ運営者として働ける人も少なくなります。これから毎年80万~100万人が減少すると予測されており、この状況は鳥取県が毎年2つ位無くなることと同じです。

このような人口減少社会において、各企業は優秀な人材の確保に競争することになります。その中で知っておいてほしいことが「ビジネスケアラー」と呼ばれる働きながら介護を担う「介護と仕事を両立している人」です。詳しくは私の鳥取の経営者仲間であるN.K.Cナーシング コア コーポレーション合同会社の代表 神⼾さんのブログを参照してください。

 

「ビジネスケアラー」の現状と課題〜介護と仕事の両立、どう向き合っていけばいい?〜

これらの問題解決には政府や専門家の取り組みが必要ですが、私たち中小企業経営者が取り組めることは、従業員の仕事とプライベートの両立を支援することです。従来の正社員至上主義から脱却し、それぞれの従業員に合った働き方を提案すること。雇用契約を柔軟に変更することで、ビジネスケアラーの状態であっても、その従業員に合った形で新しい挑戦を一緒に創り上げていく姿勢が重要になります。優秀だと思うけどフルタイムで働けないから採用できないのではなく、フルタイムで働けない事情を理解しつつ、互いに理解し合える社内環境を整備していくことが、今の時代に合ったネットショップ運営ではないでしょうか?

人が不足することを前提に、従業員とよく話し合う風土を作り、AI部下を活用して「ネットショップ運営の産業革命」を実現できるように今のうちに準備を進めていきましょう。


【第3の視点:集客はどうする】インターネット上での情報検索の変化とGoogleが提唱する新たな方向性について

生成系AIの普及によるフェイクニュースの大量発生は、2024年もさらに様々な形に変わりより顕著になるでしょう。SNSの普及により個人が大衆に情報を発信する力を得たこと、さらに生成系AIの登場で不正確な情報の拡散が加速していってしまうことは避けられない事実と思います。

しかし、巨大IT企業はこの状況を放置しません。特にGoogleの検索システムのアップデートは重要です。Googleは「自分自身の経験に基づく情報発信」を重視し、専門性が高いと判断された情報をより多くの人に届けるようにします。個人の体験に基づく情報発信はユニークな価値を持ちます。その経験を共有することで、多様な人々との対話が生まれ、情報がアップデートされます。Googleは、こうした情報共有を積極的に行う人々を評価する方向に進んでいます。

SNSの普及により、個人の力が重要視される未来は変わりませんが、個人のユニークな体験から得られた情報がネット上に多く存在することで、手助けを受ける人が増えるでしょう。ただし、ユニークな情報発信は時に対立や摩擦を生み、挑戦した結果が「失敗」と捉えられることもあります。このため、挑戦したこと、失敗したこと自体を称賛する文化の構築も重要です。誰も経験していない分野であれば、たたき台を作り、それを公開すること自体が称賛され評価されるべきです。「やってみた」という行動の自体をもっともとっとほめていく文化づくりが今求められるべきです。

2024年は、個人の経験や考えを情報発信していくことが重要な要素となり、新しい情報検索の時代の幕開けにするために一緒に失敗を称賛する文化を創っていきましょう!


【第4の視点:モノが届かない】第4次物流革命、都市と地方の差が生む新たな戦略

2024年、トラックドライバーの労働規制の強化により、都市部では物流の速達性が加速する一方、地方では物資の届きにくさが顕著になるでしょう。配達人材の不足は避けられない現実であり、物流のIT化も進むことが予想されます。ネットショップ運営において考えられる対応策としては、「まとめて送る」と「取りに来てもらう」の二つが重要です。

「まとめて送る」とは物流センターを利用することを意味します。鳥取県の事業者なら、岡山県津山市の中国自動車道周辺や兵庫県神戸市の山陽自動車道周辺の物流センターを活用する事例があります。小規模事業者でも、月間約100件程度の発送から利用可能な物流センターや従量課金制のサービスもあります。

一方、「お客様に取りに来てもらう」という戦略は、実店舗の開設、つまり6次化への取り組みを指します。ネットショップ事業を推進する中で、物産展や展示会、イベントなどで直接顧客と対話する機会が増えます。この対話を通じて、事業者としてのこだわりや他社との違い、そして地方での事業運営に伴う特有の事情を理解してもらうことが重要です。特に小規模事業者は大手企業と比べて柔軟な対応が難しい場合があります。顧客に寄り添うコミュニケーションが肝心で、その結果、顧客が事業者側の現状を知りたいという欲求が増えていき、結果として事業所への来店を目的として定期的な往来が増えることを狙います。つまり観光事業との共創です。地方の観光にとっては目的地となりえる場所の存在が増えることは大切であり、その事業が保有するユニークな価値が観光とマッチしていくことが出来るはずです。食品以外にも製造業も十分な可能性がある領域ではないでしょうか?

中長期的には、自動運転、ドローン、物流の自動化など「ロジスティック4.0」の時代が到来することが予想されますが、そこまでの間、「商品の届くのが遅いのは仕方がない」という現状は、日本の物流品質の見直しと再評価の機会にもなるとよいかもしれませんね。


【第5の視点:みんなで伴奏しよう】元気な人同士が繋がることの大切さ。バーチャルとリアルの2極を楽しむ時代へ

2024年のアフターコロナ時代、特にビジネス領域ではオンラインで繋がることが主流となりますが、特別な時にはオフラインでの直接的な集まりが重要視されます。遠距離恋愛に例えると、LINEや電話で日々を繋ぎ、月に1回の直接会う時間を特別なものとする傾向が強まります。人口減少社会では、同じ思いを持つ人たちが同じ地域に住む確率は低下する一方で、IT化により、オンラインでのつながりが容易になります。非日常である直接会う機会を有意義に過ごし、日常はオンラインでつながる「新しい日常」が形成されます。

この新しい日常を活かして「中小企業のネットショップ運営者」同士が繋がり、成長機会を作ることの重要性が増していきます。特に地方のネット店長は孤立しやすい環境にあります。小規模な会社では一人で作業する担当者が多く、売上の増加と共に一人での忙しさが増し、周囲の理解を得にくくなることもあります。従業員の存在価値が売上実績に結びつけられる傾向がある一方で、ネットショップは商品や売上だけでなく、地域の魅力や会社の素晴らしさ、従業員の魅力などを多面的に発信します。このような情報発信をコツコツと続けるネット店長が孤立しないよう、適切なサポートが必要です。

生成系AIによる仕事の効率化が進む2024年は、効率化に伴うスタッフの孤立化が新たな問題として浮上します。「人と人とが繋がり合い、互いを尊重し、課題を解決していく」という仕事の醍醐味を大切にし、多くのステークホルダーとのつながりを保つことが事業継続に欠かせません。

アフターコロナ時代は不確実な未来が広がっていますが、一緒にワクワクする未来を創造していくためには、「伴走」ではなく「伴奏」、つまり共に尊重しあい、共に成長していくことが重要になると考えています。


2024年はネット店長同士がより深く繋がる年にしましょう。
私は、自分が体験したユニークな情報を定期的に発信し、より多くのネット店長が繋がる場を作っていきます。
また、私を支えてくれた専門家たちの知見も惜しみなく共有し、このつながりに共感してくれた仲間たちと共に成長していきたいと思っています。

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この記事を書いた人

高林 努

東京でネットビジネスに約20年従事。
IMJグループ、電通レイザーフィッシュ、クラウドワークスでは、大手企業のインターネットビジネスの事業立案から実践構築までを担当。
2017年「地元鳥取を元気にしたい!」という思いから、(株)ダブルノットを設立。
地域を越えて日本全国に商品をアピールする“地産外商”を掲げ、ネット店長の育成に尽力。鳥取県八頭町、兵庫県豊岡市でデジタル人材育成を実施中!