2024年版:中小企業向けのネットショップの始め方

2024年版 中小企業向けのネットショップの始め方

以前書かせてもらった「2024年の5つの視点で見る未来予想」を踏まえたうえで、ネットショップ運営をこれから始める方向けに、成功のために重要なステップを5つの章に分けて紹介します。ネットショップ運営はシステム構築ではないです。ネットショップ運営を一つの「事業」として捉えることで経営者としての深い洞察、事業計画の策定、商品の魅力の伝え方、そして効果的なチーム作りに至るまで、あらゆる角度から中小企業のネットショップ運営の核心に迫ります。ネットショップを単なる販売チャネルと捉えるのではなく、皆さんの事業の将来の基盤としてどのように育てていくかに焦点を当て、私自身の6年間の経験と学びをもとに出来るだけわかり「ここだけは押さえてほしい!」というポイントを語らせて頂きました。

1.ネットショップは「事業」であることを理解しましょう

「ITに詳しくないから、よくわからないけど、知り合いのWeb制作会社に頼んでサクッと作ってもらえば、なんとかなるかな」と考える方もいます。また、「社内にパソコンが得意な事務員がいるから、その人に任せておけば大丈夫だろう」と思っている経営者もいるでしょう。補助金を活用すれば、初期投資も少なく済むと考える人もいます。

しかし、ネットショップは、ただ作ればいいというものではありません。確かに、補助金を上手に使えば、手出し10万円程度で作ることは可能です。しかし、肝心なのは、作っても売れないという現実です。ネットショップは、インターネット上の「店舗」という箱にすぎません。その箱を想いのある素敵な店に創り上げ、運営することで、初めて売上が立つ「事業」になります。もし「事業」としての本気の意識がない場合は、ネットショップ運営を見直すべきです。

「とりあえず作ってみたけど売れなかった」「Web制作会社が難しいことばかり言うからやめた」といった言い訳は、結果としてカッコ悪く、本気でネットショップ運営を考えている人たちにとっては迷惑な存在です。そして、ただ作るだけのWeb制作会社にも注意が必要です。補助金を活用しても、運営がうまくいかなければ無意味です。しっかりと「事業」としてネットショップ運営に取り組むことが成功への道です。

2.事業なので、まずは「計画」をざっくりでもよいので立ててみましょう

ネットショップの運営をスタートするにあたっては、まず売上目標を設定しましょう。1年後、2年後にどれくらい売りたいか、夢を具体的な数字に変えてみてください。

次に、その売上目標を達成するための経費を考えます。経費には「売上原価」と「販管費」の二つがあります。売上原価とは、商品を製造し、お客様に届けるために必要な費用です。食品ならば原材料費、加工費、梱包費、配送費などが含まれます。分からない場合は、売上の50%をとりあえず売上原価として考えても良いでしょう。一方、販管費はネットショップ運営に必要なその他の経費です。これには以下のようなものが含まれます。実店舗に言い換えてみるとよくわかると思います。

ネットショップ運営
経費項目
実店舗で言い換えると
何経費項目?
ざっくり月額費用
システム月額保守費テナント賃料1万円
(もっと高機能もあるけど)
決済システム手数料POSレジ利用費1万円
(売上の5%。月20万円想定)
広告宣伝費同じく広告宣伝費3万円
(とりあえずおく)
人件費同じく人件費15万円
(自分自身でも計上しておく)
その他諸経費光熱費等2万円
(とりあえずおく)
合計:22万円/月

月々約20万円ちょっと、年間で約250万円の販管費が必要になります。これらの経費を考慮して、営業利益がプラスになるような計画を立てましょう。営業利益とは、売上から経費を引いたものです。つまり

売上-経費(仕入原価+販管費250万円)≦営業利益(黒字)

という方程式が成り立ち、営業利益が黒字になるためには年間の売上を500万円以上に設定しないと事業としては難しいです。この点を意識しながら、具体的な目標を立ててみてください。計画を立てる際には、売上だけでなく、売上原価や販管費を含めた経費全体を見て「黒字」になることが重要です。シンプルに考え始めて、実際の運営を通じて徐々に詳細な計画を練っていくことが成功への鍵となります。

3.「地区大会」から「全国大会」へ:自社商品の魅力を明確にし、想いを文章で伝える

自社の商品が持つ独自の魅力を見つめ直し、それを明確に文章として表現することが重要です。地域内での販売(「地区大会」)では、付き合いで売れているかもしれませんが、競合が多いネットショップの世界(「全国大会」)では、商品の魅力をより鮮明に文章にする必要があります。

もし自分では商品の魅力がはっきりと把握できない場合は、お客様に直接聞いてみましょう。まだお客様が居ない事業の場合は知り合いや経営者仲間に聞いてみましょう。不安や恥ずかしさを感じるかもしれませんが、多くの人に自社商品のことを聞くことで、その魅力を明確にすることができます。また、商品の弱みを理解することも大切です。どんな商品にも弱みがあります。その弱みを「特徴」として捉え、合わない人にはそのことを正直に伝える勇気も必要です。

ネットショップはなかなかお客様に商品について直接語る機会がとれないものです。そのためネットショップの商品ページやブログで自社の商品の特徴を「文章」でしっかりと表現できるようにする必要があります。文章で語ることができたとき、それが全国規模のネットショップ運営への準備が整った証となります。自分たちの商品が必要とされる人に届けるために、全国大会の舞台で商品の魅力を最大限に伝える準備をしましょう。

4.誰が運営するのか?チーム作りを考えよう

あなたがざっくり作成した事業計画に記載された人件費は、一体誰のためのものでしょうか?ネットショップもリアルの店舗と同じく、店長が必要です。そして、ビジネスが成長するにつれて「店長とスタッフ」を雇用し、チームでネットショップを運営していくことになります。ここで重要なのは、経営者の熱量と想いです。これまで身近な地域の方々に熱心に自社の想いを伝えてきた経営者は、今度は全国の直接会うことがほぼない顧客に商品を届けることになります。店長やスタッフたちも、経営者と同じく、自社や商品に対する熱量と想いを届け続ける必要があります。

店長やスタッフたちは時に進むべき方向を見失うことがあります。そんな時、彼らに道しるべを示すのは経営者の役割です。経営者はスタッフが悩んだり立ち止まった時に、「こっちの方向に進もう」と指示することができなければなりません。これを実現するためには、経営者自身がネットショップ運営に対して常に興味を持ち続けることが必要です。

リアルの店舗と同じく、経営者を筆頭に、情熱と想いのあるチームを作ることが求められます。経営者がネットショップ運営に真剣な想いを持てないのであれば、ECサイト構築やネットショップ運営事業に手を出さない方が良いでしょう。ネットショップ運営は、ただのシステム運営ではなく、経営者とチームの共有された情熱とビジョンによって成功するのです。

5.ネットショップ運営関係者同士が繋がる仲間創り

ネットショップ運営には、パッケージデザイン、梱包方法、商品販売方法、アフターフォローなど、まだまだ多くのことを考え実行していく必要があります。しかし、ざっくり事業計画があり、商品の魅力を言葉で表現できる準備と、それを率いる想いのある経営者がいれば、スタートする準備は整っています。

ネットショップは単なる販売手段ではなく、あなたの会社の将来の経営基盤となりうる重要な事業です。経営者自らがこの事業に率先して関心を持ち、学び、スタッフと共に事業成長の基盤を築くために真剣に取り組むことが求められます。これはパソコンに詳しい事務員に任せるようなものではありません。経営者が自社商品の特徴を熱量を持って語り、それを全国のお客様に届けるためにコツコツと運営することが大切です。

そして経営者にとってネットショップ運営でもう一つ重要なのは、相談できる相手の存在です。つまり仲間創りです。ネットショップを成功させている経営者仲間や身近な経営支援機関が適切な相談相手になります。ただし、これらの相談相手は多くの「やってみたい」という人からの相談を受けており、初めはあなたも多くの本気でない人と見なされるかもしれません。しかし、あなたが事業計画書や商品に対する熱い想い、チーム作りを行っている事など、本気で取り組む姿勢を見せると、これらの相談相手もその情熱を感じ取り、親身になってサポートを提供してくれるでしょう。本気で取り組むことが、適切なサポートとアドバイスを得るための鍵となります。

商工会議所、金融機関、行政の無料アドバイザー制度なども活用しましょう。以下は相談できる代表例です。あなたは、これまでもネットショップ運営の相談したことがあるかもしれませんが、このブログに書いたような「事業計画」「商品への想い」「熱量ある運営チーム」を作って相談に行きましょう!きっと適切なアドバイスを得ることができるでしょう!

  • (独)中小企業基盤整備機構:よろず支援拠点(全国に支援拠点があります)
  • 中小企業庁:認定経営革新支援機関検索システム(この検索システムで「販路開拓・マーケティン」で検索してみましょう)
  • 大阪産業創造館(サンソウカン)(大阪市の方以外でもご利用できると聞いていますが、相談したい方は一度連絡してみてください。産創館さんの取り組みはとても素晴らしいです!)

繰り返しますが、「補助金を使って手出しで10万円でできる」という考えは誤りです。
ネットショップは事業であり、将来の経営基盤になるべき存在です。私自身も6年かけてようやく経営基盤とすることができました。
私は「ネット店長育成塾の塾長」として、これからのネットショップ運営を本気でしたいと考えている方に対して、過去の経験や失敗からの学びを伝え、同じ失敗を繰り返さないよう、前進・改善する方法を皆さんに伝え、一緒に成長していきたいと思います。

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この記事を書いた人

高林 努

東京でネットビジネスに約20年従事。
IMJグループ、電通レイザーフィッシュ、クラウドワークスでは、大手企業のインターネットビジネスの事業立案から実践構築までを担当。
2017年「地元鳥取を元気にしたい!」という思いから、(株)ダブルノットを設立。
地域を越えて日本全国に商品をアピールする“地産外商”を掲げ、ネット店長の育成に尽力。鳥取県八頭町、兵庫県豊岡市でデジタル人材育成を実施中!