ダブルノット/DX学校豊岡校の代表の高林です。
最近、生成AIを使うようになって、一つひとつの仕事が本当に短時間でこなせるようになってきました。
メールの返信、会議の議事録、SNSの投稿原稿の作成。他にも、契約書のチェックや企画書の叩き台づくり、ちょっとしたリサーチまで。今話題のAIツールをいくつか使いこなすだけで、数年前とは比べ物にならないほど、仕事のスピードは圧倒的に上がりました。これは間違いありません。
ただ、ここで気をつけないといけないことがあります。
それは、生成AIで仕事が速くなったあと、その空いた時間を何に使うのかということです。
ここで大事になるのが、「緊急度」と「優先度」の違いです。
緊急度が高い仕事というのは、今すぐ対応しないと困る仕事です。締切が迫っている、返事を待たせている、今日中に処理しないと現場が止まる。そういう仕事です。
一方で、優先度が高い仕事というのは、会社にとって先に進める価値が高い仕事です。売上につながること、未来の強みをつくること、まだ手をつけられていない課題に向き合うこと。すぐ成果が出るとは限らないけれど、長い目で見ると大事なのは、むしろこちらです。
問題は、空いた時間ができたときです。
人は、時間が空くと、その空白を埋めたくなります。しかも選びがちなのは、新しい挑戦ではなく、慣れていて、うまくできて、褒められやすい仕事です。そして厄介なのは、そこで「本当は今すぐでなくてもいい仕事」が、本人の中で勝手に「急ぐべき仕事」に変わってしまうことです。本来なら優先度で考えるべきなのに、空いた時間を埋めるために、目の前の得意な仕事の緊急度を自分で上げてしまう。ここが、生成AI時代の落とし穴だと思っています。
たとえば、ある飲食店の話です。
メニューづくり、発注、予約対応、お問い合わせ対応。生成AIを使って、いろんな業務がかなり短く終わるようになりました。では、その空いた時間で何をしたのか。
スタッフのみなさんが始めたのは、掃除でした。
掃除が悪いわけではありません。むしろ大事です。そのお店はもともときれいで、近隣店舗よりも清潔さに自信があった。お客様からも「いつもきれいで気持ちいいですよね」と言われていたそうです。
だからこそ経営者としては、もう十分評価されているその強みをさらに磨き込むより、空いた時間は別のことに使ってほしいと思ったわけです。
たとえば、最近来なくなったお客様に連絡する。客単価を上げる工夫をする。新しいメニューを考える。LTVを高める。そういう、売上に近い仕事です。
でも現場では、空いた時間がトイレ掃除、窓掃除、庭掃除に入っていく。
なぜそうなるのか。
掃除はやれば成果が見えやすい。きれいになったこともわかりやすい。褒められることも多い。失敗もしにくい。だから、「今のうちにやっておこう」ではなく、「今やるべきことだ」と、だんだん本人の中で扱いが変わっていくのです。
つまり、もともとは緊急ではなかった仕事の緊急度を、自分で上げてしまう。ここに、経営者とのズレが生まれます。
もう一つ、チラシづくりでも同じようなことがありました。
そのスタッフは、もともとチラシづくりが上手で、見やすいと評判でした。テンプレートも使いこなしていて、本人もデザインが好きだった。そこに生成AIが入って、さらに洗練された表現ができるようになった。
でも、かけている時間はほとんど減らなかったそうです。
なぜか。AIで楽になった分、今度は「もっといい表現ができる」「もっとかっこよくできる」と、別のところに時間を使うようになったからです。
これも同じです。
本来なら、短く終わった分だけ別の仕事に向かえたはずです。
でも実際には、「このチラシ、もう少し良くできる」「ここも直したい」「せっかくなら、もっと完成度を上げたい」となっていく。そうして、本来はそこまで急がなくてもいい仕上げ作業が、本人の中でどんどん緊急度の高い仕事になっていくのです。
この2つの事例に共通しているのは、生成AIで生まれた時間が、新しい挑戦に向かわず、いま得意な仕事をさらに磨くことに使われたことです。
しかも、そのとき現場では、ただ丁寧にやっているつもりです。
悪気はありません。むしろ、良かれと思ってやっています。
でもその結果、会社として本当に優先度の高い仕事が後回しになる。
売上に近い仕事、未来をつくる仕事、まだ手をつけられていない仕事が、また先送りされる。
だからこそ、経営者が示さないといけないのだと思います。
空いた時間で何をするのか。
何は十分できている仕事で、何がまだ足りていない仕事なのか。
何を「今すぐやる仕事」にして、何を「いったん止める仕事」にするのか。
そこを示さないと、現場は空いた時間を埋めるために、自分の得意な仕事の緊急度をどんどん上げてしまう。
新しい挑戦は、たいていうまくいきません。最初は雑です。精度も低い。成果も見えにくい。だからこそ、放っておくと人は、うまくできる仕事に戻っていきます。
でも、それでもなお、優先度の高い仕事に時間を振り向ける。そこを決めるのが経営者です。
緊急度に振り回されるのではなく、優先度で仕事を決める。そして、生成AIで生まれた時間を、未来をつくる仕事に振り向ける。
それが、本当の意味での生産性向上なのだと思います。
生成AIで仕事が速くなる。それ自体は、もうかなり進んできました。
でも、大事なのはその先です。
生成AIで空いた時間を、何に使うのか。
そこを間違えると、会社は速くなるけれど、強くはならない。私はそこが、いちばん怖いと思っています。
生成AIを“右腕”に! ダブルノットの生成AI講座
もし、「自社もこの落とし穴にはまっているかもしれない」と感じられたら、ぜひ一度お話させてください。
AIツールの導入だけでなく、生まれた時間の活用方法や、優先度の設定といったマネジメントの観点からも、会社を強くするためのサポートをさせていただきます。
