ダブルノット / DX学校豊岡校の高林です。

3月11日で51歳になります。

SNSの誕生日通知の機能のおかげか、数日前からお祝いの言葉をいただくこともあり、いくつになって自分の生まれた日を気にかけていただけるのはありがたいことです。

2011年以降、自分の誕生日だけではなく、多くの命を追悼して震災を振り返り、防災を考える日にもなりました。

東北のことを、遠い話にしないために

東北地方には、弊社のスタッフが数名いて完全リモートで頑張ってくれています。普段は画面越しにやり取りすることが多く、なかなかリアルで会う機会がありません。だからこそ、今年の夏ごろには社員研修も兼ねて、福島とか仙台とか、そのあたりに行けたらいいなあと考えています。

鳥取や兵庫という西日本で活動していると、どうしても東日本大震災は「テレビの向こう側の話」になりやすいところがあります。距離もあるし、日々の暮らしの中で実感しづらい。でも私は当時東京で働いていましたし、復興支援という形でできる範囲のボランティアにも参加していました。もちろん微力ですし、現地で生活していたわけでもない。だから「分かったようなこと」を言える立場ではありません。ただ、それでもあの日の空気や、その後の社会のざわつきのようなものは、自分の中にかなり深く残っています。

そして15年が経ちました。15年というのは、短いようで長い。長いようで、でも被災した方にとっては決して過去形では片づけられない時間でもあると思います。私のように毎年誕生日が来るたびに思い出す人間もいるし、3月になると自然に気持ちが引き締まる人も多いはずです。そう考えると、節目というのは単に数字の区切りではなく、自分たちの暮らしのあり方を見直すタイミングなのだろうなと思います。

15年前、ちょうどスマホが広がり始めていた

15年前を振り返ると、震災のことだけではなく、デジタルの世界でも大きな変化が進んでいた時期でした。

ちょうどスマホが一気に広がり始めた頃です。LINEの登場や端末そのものの進化もあった。いろいろな要素が重なって今のスマホ社会ができたのだと思います。でも、その中でも大きかったのは、やはり通信インフラの進化ではないかと私は思っています。実際、モバイル通信技術の普及には、ブロードバンドやインターネットの浸透、都市化、所得、規制環境など複数の要因が影響したと思いますが、その中で通信環境の整備が大きな土台になっていたことは確かだと思います。

  • 動画が普通に見られるようになった。
  • 地図がすぐ開けるようになった。
  • 写真も動画もその場で送れるようになった。
  • クラウドサービスが当たり前になった。

そういう一つひとつは、いまでは何でもないことのように思えますが、当時はかなり大きな変化でした。つまりスマホが広がったのは、単に「便利な端末が出たから」だけではなく、その便利さを支える基盤が整ってきたからなんだと思います。

どこでもつながる、遅くない、ストレスなく使える。そういう土台ができて初めて、人はそれを生活の中に取り込んでいくのだろうと思います。

そして今、生成AIが次の当たり前になろうとしている

いま、その次に来ているのが生成AIだと感じています。

もちろん、まだスマホほど当たり前の存在になったとは言えません。使っている人と使っていない人の差も大きいし、便利だと思っている人もいれば、怖い、難しい、よく分からないと思っている人もいます。企業の中でも、積極的に触っている経営者がいる一方で、現場の従業員の方はまだ様子見、ということも少なくありません。

じゃあ、何が生成AIを社会の中に本格的に入れていくうえで大きなテーマになるの?

その一つが「電力」だと思っています。AIの拡大はデータセンターの高性能化、大規模化とセットで進みますし、その結果として電力需要が大きく増えていくという見通しは、国際エネルギー機関(IEA)などでもはっきり示されています。つまり、生成AIの普及を支える重要なインフラの一つは、安定した電力供給なのではないか、というのが今の私の実感です。

少し前までは、AIの話というと、賢いとか、便利とか、仕事が速くなるとか、そのくらいの話が中心でした。でもこれからは、それだけでは済まなくなっていくのかもしれません。どこで電気をつくるのか、どう安定供給するのか、地域の資源をどう活かすのか。そういう話と生成AIが、実はかなり近いところでつながってくるように思っています。

温泉熱の話と、遠回りに見える人づくりの話

ちょうど今、私は温泉熱という資源を活かした新たな産業基盤の整備に関わるプロジェクトの立ち上げ支援をしています。こういう仕事に関わっていると、エネルギーって単なる技術の話ではないのだなと感じます。地域資源をどう活かすか。地域でどんな産業を育てるか。どうすれば雇用につながるのか。安定した暮らしをどうつくるのか。そういうこと全部がつながってきます。

すると不思議なもので、私がずっとやっている「地方でのデジタル利活用人材の育成」という仕事も、実は同じ線の上にあるのではないかと思えてきます。

人を育てる。組織を育てる。地域でちゃんと使えるインフラを増やしていく。

一見すると地味だし、遠回りに見えるかもしれません。でも、社会の土台をつくるという意味では、とても大事なことをやっているのかもしれない。そんなふうに思うことが最近増えてきました。

中小企業の現場で感じる、これまでのITとの距離感

生成AIの企業導入支援、とくに中小企業向けの支援をしていると、毎回のように感じることがあります。それは、多くの経営者が、これまでデジタルやITで「やって良かった」という実感をあまり持てていないということです。

  • ホームページは高いだけだった。
  • システムを入れても結局現場が使わなかった。
  • 制作会社との付き合いでそのままにしている。
  • 何となく3年経ったから変えた。
  • 補助金があるから入れてみたけど、終わったらそのまま止まった。

そういう話は、本当にたくさん聞いてきました。そして昔の自分だったら、そういう話をする経営者に対して、どこかで「分かってないな」と思っていたかもしれません。少し見下したような空気で話していたかもしれない。今思えば、かなり危ないですね。

でも今は違います。

  • なぜ自分は故郷に戻ってきたのか。
  • 何のために地方でこの仕事をしているのか。

そこに立ち返ると、まずはもっと話を聞かなければいけないと思うようになりました。なぜそう思うのか。なぜ過去にうまくいかなかったのか。何が不安なのか。何に腹が立っているのか。本音はどこにあるのか。そこをちゃんと聞かないまま、「これからはAIです」と言っても、やはり届きません。

糸口はある。でも時間がかかる

ゆっくり話を聞いていると、必ず何かしらの糸口は見えてきます。ただ、その糸口が見えるまでに時間がかかることが多い。

  • 何となく「ありかも」と思ってもらうのが3か月。
  • 少し高林の話を聞いてみようかなと思ってもらうのが半年。
  • ちょっと社内の空気が変わってきたかもしれない、あるいは少し収益に変化が出てきたかもしれないと感じるのが1年。

これでも十分早い方だと、私は思っています。デジタルやITって、すぐ結果が出るように見えることもありますが、実際には「納得」と「定着」が一番時間がかかります。経営者だけが盛り上がってもダメだし、現場だけ頑張っても続きません。

会社の中で少しずつ腹落ちしていくことが必要です。

その点、ECサイトの運営支援をしている会社は、比較的話が早いことが多いです。なぜかと言うと、経営者自身が過去にデジタルで助かった経験を持っていることが多いからです。

  • デジタルを使って売上が伸びた。
  • Web広告やSNSで反応が見えた。
  • 業務が少し楽になった。
  • お客様との接点が増えた。

そういう経験があるから、その次の一歩としてネットショップにも進みやすい。つまり「デジタルって、ちゃんと使えば意味がある」という体験がすでにあるわけです。だからネットショップの悩みは深くても、話のスタート地点が違う。ここは大きいなと思います。逆に言えば、中小企業の多くは、そこまでの成功体験がまだないのだとも感じます。
だから話が遅いのではなく、慎重になるのは自然なことなんだろうと思います。

経営者が前のめりでも、従業員はそうとは限らない

最近、生成AIを面白いと思う経営者はかなり増えています。「これは使えるかもしれない」「自分の右腕になるかもしれない」そんなふうに感じている方は確実に増えました。それ自体はとても良いことです。ただ、従業員の方からすると、話は少し違います。

  • また社長が新しいことを言い出した。
  • また使いにくいITツールを持ってきた。
  • 前も定着しなかったのに、また始まるのか。

そう思われることもあるでしょう。

これも無理はありません。これまでの失敗体験があるからです。なので、本当に大事なのはツールの機能ではなく、「今回は違う」とどう伝えるか、なのだと思います。現場の負担がどう減るのか。面倒がどう減るのか。仕事がどう楽になるのか。そこまで落ちて初めて、生成AIは「社長の趣味」ではなく「会社のインフラ」になります。

防災も、インフラも、デジタルも、全部つながっている

そんなことを考えていると、私にとって3月11日という日は、誕生日であると同時に、いろいろなことが一本につながる日なのだと思います。

  1. 震災を思い出す。
  2. 防災を考える。
  3. 防災を考えると、暮らしの土台を考える。
  4. 暮らしの土台を考えると、エネルギーや通信のようなインフラを考える。
  5. インフラを考えると、その上に乗る産業や企業活動のことを考える。
  6. そして最後は、人をどう育てるか、組織をどう育てるか、という話に戻ってくる。

一見ばらばらに見えることですが、私の中ではだんだんつながってきました。防災だけを語っていても前に進まないし、AIだけを語っていても足りない。日々の暮らしが安定していて、安心して挑戦できる土台があって、その上で初めて企業の成長もあるのだと思います。

色々振り返ってみましたが、結局、私が今やりたいことは、今年も変わらなかったですね。

『デジタルを利活用できる人をつくること。そして、その人たちの集まりとしての組織をつくること。』

地方でも、小さな会社でも、ちゃんと使える力を持った人が増えていくこと。そこを支えることです。そのためには、自分自身がもっと体験しないといけない。もっと人柱にならないといけない。もっとちくちくした失敗を積み重ねないといけない。やってみたら思ったより面倒だった。便利なはずが、逆に現場が混乱した。期待しすぎて失敗した。などなど

そういうことを自分でも経験しながら、その失敗から見えてくる課題を理解して、じゃあどうすればうまくいくのかを考え続ける。そういう役割でいたいと思っています。

格好いいことを言うつもりはないですが、皆さんよりほんの少しだけ先に失敗して、ほんの少しだけ先に試して、その結果を持ち帰って話せる人でいたい。

そういう挑戦者で、これからもいたいなと思っています。

51歳になりました。
まだまだ、出来ていないことばかりです。
でも、やりたいことも多いです。
誕生日だからこそ、そんなことを改めて考えています。
もっと頑張ろう。おれ。