生成AIはウソをつく?それって本当に生成AIのせい?私たちのせいじゃない?

ウソをつくのは、AIだけじゃない

「生成AIはウソをつく」――この言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。AIの出力結果が間違っていたり、事実と異なる内容が出てきたりすることがあります。たしかに、それだけを見れば「AIは信用できない」と感じるのも無理はありません。

でも、ちょっと立ち止まって考えてみてください。

私たち人間も、日々の生活や仕事の中で、意図的でなくても「ウソ」をついていることがありませんか?従業員も、コンサルタントも、経営者も、そして私自身も。知らないうちに間違った情報を言ってしまったり、自信がないのに「大丈夫です」と言ってしまったりすることもあるでしょう。ここで大事なのは、「ウソ」にも種類があるということです。良いウソと悪いウソです。

  • 良いウソとは、“誤解”や“認識の違い”といった、意図的ではないがズレが生じてしまった情報のこと。
  • 悪いウソとは、“偽証”や“詐欺”のように、意図的に他人を騙そうとする行為。

この2つをしっかり区別することが、生成AIを使いこなす上でも、また人間同士の関係においても、とても重要なポイントになります。

「答え」は過去の情報から作られる

人間は、判断を迫られたとき、過去の経験や記憶、知識をフル活用して「答え」を出そうとします。例えば、「これはこうだったはず」と、以前の成功体験や聞いた話をもとに意見を述べることはよくあります。しかし、その情報が古かったり、そもそも間違っていた場合、その人は知らないうちに「ウソをついた人」になってしまいます。

これは生成AIにもまったく同じことが言えます。

AIもまた、過去の学習データを元に答えを導き出しています。そのデータが古かったり、誤った情報を含んでいれば、当然その出力結果も正しくはならないわけです。つまり、AIが「ウソをついている」のではなく、「元の情報がウソだった」「判断条件が間違っていた」という構造の問題なのです。

ウソを生む「前提のすれ違い」

さらにもうひとつ、見逃してはならないのが「指示を出す側の責任」です。仕事の場面では、「あれ、やっといて」「例の件、お願い」といったあいまいな指示が飛び交うことも多いものです。

この「あれ」や「例の件」には、実は多くの前提条件が含まれています。たとえば、「これまでこうしてきた」「あの人に聞けば分かるはず」「今日は急ぎ」など、言葉には出てこない背景情報がたくさんあるのです。

もし、指示を受け取る側がそれらの前提を正しく理解していれば、意図通りの結果が返ってくるかもしれません。でも、前提の一部を誤解していたら、まったく違う答えが返ってくることになります。このとき、指示した側は「ウソをつかれた」「ちゃんとやってくれなかった」と感じるかもしれませんが、実際には「前提条件を明確に伝えなかった」自分にも原因があるわけです。このような“前提のすれ違い”は、AI相手でも人間相手でも、共通して発生します。だからこそ、正しい理解と丁寧なコミュニケーションが必要なのです。

「ウソ」は問い直しで正せる

では、ウソを避けるにはどうしたらいいのでしょうか?

実は、どれだけIQ(論理的思考力)が高い人でも、間違った判断をすることはあります。大切なのは、そうした“ズレ”に気づき、それを訂正する力です。

ここで登場するのがEQ(感情的知性)です。EQとは、相手の感情を読み取ったり、自分の感情をコントロールしたり、コミュニケーションを円滑にする力のこと。

たとえば、「それってこういう意味ですか?」と確認を入れる。
あるいは、「この点だけ、もう一度教えてもらえますか?」と柔らかく問い直す。

こうしたEQに基づく対応があることで、相手の間違いやズレを攻撃せずに、建設的に修正することができます。

これは、生成AIに対しても同じです。「この情報の根拠は?」「最新の情報で再確認できる?」といった問い直しをすることでより精度の高い回答を返してくれるようになります。

人間の仕事は「受け取って考える」こと

生成AIの進化によって、さまざまな仕事が効率化され、置き換えられつつあります。特に、業務フローが描ける流れ作業の仕事や、大量のデータ処理などは、生成AIが得意とする領域です。でも、情報を受け取り、それを解釈し、状況に応じて判断し、行動につなげる。このプロセスは、今も変わらず“人間”にしかできません。

なぜなら、そこには「感情」や「関係性」、「空気を読む」といった、非言語的な情報が含まれるからです。こうした情報を扱うには、EQの力が不可欠です。つまり、AIと共存していく未来において、人間が担うべき役割は、「感情を伴う判断」と「文脈を理解する力」によって支えられていくのです。

私たちに求められるEQのアップデート

生成AIが進化し、対話の相手が「人」から「生成AI」に置き換わりつつある今。私たちは、これまでの価値観やコミュニケーションのあり方を見直す必要があります。

  • ウソとは何か?
  • そのウソはなぜ生まれたのか?
  • 自分にも原因はなかったか?

こうした問いを持ち続けることが、トラブルを未然に防ぎ、信頼関係を築く鍵になります。私自身も、生成AIが出した誤情報を「ウソだ!」と切り捨てるのではなく、「なぜこの答えになったのか?」と立ち止まり、指示の出し方や前提の伝え方を見直すようにしています。

そして、気づきました。AIのウソを「悪いウソ」にしてしまうのは、実は“自分自身”かもしれない、ということ。だからこそ、これからは「EQの質」を磨く時代なのです。生成AIが当たり前になったこの時代、私たち人間が本当に活かすべき力は何か?それを一緒に考え、実践していきませんか?


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この記事を書いた人

高林 努

東京でネットビジネスに約20年従事。
IMJグループ、電通レイザーフィッシュ、クラウドワークスでは、大手企業のインターネットビジネスの事業立案から実践構築までを担当。
2017年「地元鳥取を元気にしたい!」という思いから、(株)ダブルノットを設立。
地域を越えて日本全国に商品をアピールする“地産外商”を掲げ、ネット店長の育成に尽力。鳥取県八頭町、兵庫県豊岡市でデジタル人材育成を実施中!